本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

その他外国人作家

「短編画廊 絵から生まれた17の物語」 ローレンス・ブロック編



米国を代表する名画家、エドワード・ホッパー(1882-1967)。

作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」を強く示唆していると語り、ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。

彼の呼びかけに集まったのは、スティーヴン・キング、ジェフリー・ディーヴァー、マイクル・コナリー、リー・チャイルド……といった錚々たる顔ぶれ。

各々の個性を遺憾なく発揮した華麗なる文豪ギャラリーが、ここに幕を開けた――


大好きなホッパーの絵がテーマの短編集なんておもしろそう!
と、わくわくして手に取ったのですが・・・
最初の「ガーリー・ショウ」で、なんだか入りこめない

翻訳のテンポのせいなのか、絵画が描かれた時代が舞台になっているのが意識できてなかったのか・・・あ、あれ?

なので、読み慣れている作家・翻訳家さんの作品から読み始めました。
ジェフリー・ディーヴァー、スティーヴン・キング、あとは大好きな絵画作品の順に読み進めたら、
おもしろく読めました

絵画作品と同時代の世界恐慌や戦争が背景の物語が多かったかな。
映画のワンシーンの様な作品がいろんな方向に広がるので、楽しめました。

翻訳作品のアンソロジーは初めてだったかも・・・入りこみ方がわかりました


「13・67 」 陳 浩基



現在(2013年)から1967年へ、1人の名刑事の警察人生を遡りながら、香港社会の変化(アイデンティティ、生活・風景、警察=権力)をたどる逆年代記(リバース・クロノロジー)形式の本格ミステリー。

どの作品も結末に意外性があり、犯人との論戦やアクションもスピーディで迫力満点。

本格ミステリーとしても傑作だが、雨傘革命(14年)を経た今、67年の左派勢力(中国側)による反英暴動から中国返還など、香港社会の節目ごとに物語を配する構成により、市民と権力のあいだで揺れ動く香港警察のアイデェンティティを問う社会派ミステリーとしても読み応え十分


本当に「読み応え十分」ですが、いささか読みにくかったです

香港は何度か旅行で行ったので、地名はルビがなくとも何とか読めるものの
人名が・・・各章の最初しかルビがないので、名前の読みを忘れるとページをさかのぼって確認しなければなりません
特に兄弟の名前とかまぎらわしくて・・・でも無視して読み進められない

観察力と洞察力の推理は楽しめました。
主人公・クワンの最期の事件から、女王陛下の警察官だった若き日の事件まで時代を追っていくと
同じ時代を生きた関係者に繋がっていく。
50年の目まぐるしい歴史を感じます。。。

クワンの性格なのかもしれないけど、ちょっと謎解きがもったいぶりすぎ?
わかってたなら早く言ってあげて~こんなにページ数使う前に!

敵も味方も欺く鮮やかなトリック。。。あれ、本当に味方?

情報の洩れは命に係わるのに、警察の内部さえも安心できない
これはどこの国の刑事ものでも共通するお話なのか。
仲間が汚職警官だった。。。はよくある展開だけど、香港特有の社会事情も絡んで興味深かったです。


でも、翻訳にもよるのかもだけど、華文小説はしばらくいいかな。
気軽に読める感じがしないので

「わたしを離さないで」 カズオイシグロ



自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。

キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。

共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。

キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。

図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。

彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく


先にドラマを見てしまったので「臓器移植のためのクローン」制度が確立した世界の物語・・・はわかっていた。
そんなショッキングな設定にも関わらず、 抑えた調子の主人公の語りで進んでいく。

学校時代の思い出や友達とのエピソードはどこにでもありそうな気がする。
特殊な環境下であっても・・・・

原作はドラマよりずっと静謐で体制に反抗するような活動もなければ
学校を創設した先生もクローンだった・・・なんてドラマチックな展開もなし。

残酷すぎる運命を受け入れ、誰かの命のために提供し、使命を終えていく。。。


自分たちとは違うかけ離れた・・・劣った存在だと思って納得しなければ成り立たないシステム。
自分たちと同じ人間にはそんな酷いことはできないはず。


わたしが一番印象に残ったのは、最後の年老いたエミリ先生の告白。

「ヘールシャルムにいる頃もあなた方への恐怖心を抑えるのに必死でした。嫌悪感で体中が震えたことだってあります・・・」

提供者として生まれた子供たちのために私財をなげうって働いた先生の言葉が悲しすぎる。



どこかに救いがあればいいのだけれど
わたしにはみつかりませんでした




「小さなトロールと大きな洪水」 ヤンソン



本作『小さなトロールと大きな洪水』は、第二次世界大戦直後の混乱期に小冊子として出版され、長らく絶版となっていたものです。
ムーミンシリーズとしてよく知られている8作が完結した21年めの1991年に、ようやく本として出版されました。
つまり、書かれた時期でいえば、ムーミン童話シリーズの記念すべき第1作なのです。

ムーミンパパはいないけど、もう待っていられない!

冬がくる前に家を建てようと、おさないムーミントロールとママは、おそろしい森や沼をぬけ、荒れ狂う海をわたり、お日さまの光あふれるあたたかい場所をめざします。

仲のよいムーミン一家にこんな過去があったなんて。

スニフがまだ、名前をもたず、「小さな生きもの」だったころのお話


わたしが図書室でムーミンシリーズを読んだ小学生の頃にはなかった1冊。

挿絵のムーミントロールは顔が細くて今の雰囲気とはだいぶ違う。
これなら後年のアニメシリーズでカバと間違えられる事なんてぜったいなかったでしょう

闇の森から始まってちょっと暗い冒険の旅。
洪水に巻き込まれ、災害の後家族が再び出会う再生の物語。

家族のための青いペンキぬりの家も取り戻し、新しい生活が始まる予感

戦後の新しい時代への希望に満ちた、シリーズのエピソードワン


「ムーミン谷の彗星」から全巻読み直してみたくなりました

「ガーゴイル-転生する炎の愛-」 アンドリュー・デイビッドソン

事故による重度の火傷に絶望し、死を決意した男。

そこに中世ドイツで彼の恋人だったと称する女が現れる。

彼女は男を介抱しながら、異なる時代と国に生まれ変わっては繰り返される、

男と女の壮絶な物語を語る
本



装丁は、「REAL」のジャケットを思わせるようなガーゴイルの写真。
街を見下ろすガーゴイルを捉えると、このアングルになるんだろうなぁ。


なんとも、情熱的で激しい、運命的な愛の物語です。

輪廻転生って、いろんな宗教や文化圏で見られる考え方なのかしら?
イスラムでは生まれ変わるって概念はないらしいけど。

14世紀、ドイツの修道院で出会ったふたりが、
異なる時代、異なる国に生まれ変わっては、
繰り返す壮絶な愛。


14世紀のイタリア・フィレンツェ、
19世紀のイギリス、
中世の日本(大名がいるところ見ると江戸時代)、
中世のアイスランド、
を舞台に、生死をかけた物語が語られる。


でも、ちょっと疑問。
このフィレンツェのお話は、ドイツと時代がかぶるし、
同じ時に存在してるから、生まれ変わりってわけじゃないんだよねぇ。。。

前世が○○・・・ってお話としてなら夢がある。
前世の職業や、能力が、現世でも引き継がれてるみたいなね。


ただ、本気で生まれ変わりを信じて疑わない女性に対して、
どう対処していいか戸惑う主人公。
ただの妄想か?精神障害のためなのか?
まぁ、警戒するのが普通よね(笑)



おもしろくなくはないんだけど・・・

表紙のインパクトと、カナダ、アメリカでベストセラーって言葉に
期待しすぎちゃったなぁ。
そこまで激しい愛に、感動できない。。。落ち込み
これでもか、これでもかーって、こってりしたモノを見せられると
食欲なくなる感じに似てる。



「愛は死のように強く、地獄のように激しい」


いいです。。。運命なんかじゃなくても汗






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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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