本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

トリィ・ヘイデン

「うそをつく子」 トリィ・ヘイデン



ジェシーは笑顔のかわいい九歳の少女。だが日常的にうそをつき、思いどおりにならないと暴力をふるう。

両親に見放されて里親のもとを転々とするジェシーに下りた診断は、「愛着障害」だった。児童心理学者のトリイが彼女のセラピーを担当することになるが……。

愛情と忍耐をもって問題を抱えた子どもたちと向かいあって感動を呼び起こしてきた著者による、全世界待望のノンフィクション


「霧のなかの子」 から16年。久しぶりに読んだけど、やっぱりおもしろい!

ジェシーは学習能力も高く魅力的な子なのに酷い問題行動を起こし嘘をつき続ける。
彼女には何気ない思いつきの嘘でも、一人の大人の人生さえも破滅させかねない悪質さ。
フェアな対応で接していた大人が嘘の餌食になって傷つけられていくのは、何ともやりきれない

ジェシーは自分を余計に追い詰める結果になろうともすべてをぶち壊しにしてしまい、
彼女を助けるべく働いている人々を落胆させ続ける。

トリィはアメリカからイギリスに渡り、職業としては作家活動しか認められていないので、
ボランティアとして問題の少女と関っている。

以前とは時間や決定権などあらゆることに制約を抱えながらも、子供に対する愛情は昔のまま。

また嘘を言ってると思っても丁寧に耳を傾ける。決めつけたり、聞かなかったことにもしない。
理不尽な怒りや攻撃にも怒ったりしないで受け止める。

「わたしはジェシーが大好きだった。彼女はたしかにトラブル・メーカーだったが、その獰猛でどうしようもない気性が好きでたまらなかった。」

どうしたらそんな風に向き合えるのか。。。
振り回され、裏切られても枯れないその愛情はどこからくるのかしら?

イギリスでのトリィの他の物語の出版予定はないのでしょうか。ぜひ読んでみたいです

「霧のなかの子」 トリィ・ヘイデン

副題は「行き場を失った子どもたちの物語」本

すばらしい!ぐんぐんひきこまれた!


トリィは教職を離れて、病院で選択性無言症のセラピストをすることになった。
選択性無言症とは、話せる能力があるのにある場面において全く言葉を発しなくなる症状。
精神的なことが原因となる言語の問題。

この本の中でトリイが関わっているケースは
母親以外の人とは決して話さない天使のような4歳の男の子。
明るくてとてもかわいらしい。そのうえ賢く誰からも愛される子。
それなのに、彼はどんなに楽しそうにしても笑い声もたてない。
ため息などのどんな音もたてず、声を出さずに泣く。

もうひとりは両親の離婚後、父親によって誘拐され監禁と虐待の過去がある9歳の女の子。
攻撃的で人を混乱させ、胸の悪くなるような嘘をつく。
そうかと思うとふさぎ込み誰とも何日間も一言も話さない。
トラウマを抱えているのは確実だけれど、
彼女の心の安らぎはどうしたら得られるのだろう?

そして、もうひとり。
トリィの専門は子供だが、ソーシャルワーカーからアドバイスを求められた老女のケース。
脳卒中の後話さなくなったが、それは心理的に鬱状態が大きく関係していた。

それぞれのケースで相手と向き合い、
ひたむきに心を通い合わせていく過程にひきつけられる。
それは緊張の連続の真剣勝負であり、
手に触れそうで、なかなかつかめない真実。
救われない思いもあり、安らぎの暖かい涙もあり・・・

誰にも愛されたくないという人はいないだろう。
誰かに自分をわかって欲しいと思っているはず。
なのに心を防御するのはなぜだろう?

防御の方法にも、壁を作ったり攻撃的になったり
にこやかに相手を受け入れるふりををすることで心をのぞかせなかったり。
「心配しないで!私が守ってあげるから」
心からそれを言ってあげられる強さがあったらどんなにいいだろう(゜ーÅ)ホロリ

トリィの本にはいつも、がつん!とくる言葉がある。
今回は、
問題を抱えている子供たちは、だれかが喜んで自分の時間を割いて一緒にいてくれることが大切・・・という一文。

最先端の研究者や専門家でなくとも
積極的に注意を払ってくれる人と一緒にいることで
いかにあっさりと問題が解決されていくかということが語られている。
もちろんスキルは大切なことだけど、
心からの愛情に勝るものはなしと、励まされた気がする^^

「最悪なことリスト」 トリィ・ヘイデン

特殊教育の教師としての経験を綴ったトリィのノンフィクションはどれもすばらしい。
さまざまな問題を抱えた子供たちとのやりとりはリアルな感動がある。
愛だけでもスキルだけでもないアプローチ。
それに比べて小説の方は・・・正直あまりおもしろくない。
ノンフィクションがよすぎるからだと思うんだけど。

この作品は子供向けに書かれた小説なんだけど、これはよかった(T▽T)
家庭に恵まれず里親を点々とする吃音でうまく喋れない学習障害児の男の子と、
勉強ができるため2年も飛び級をして友達のいない女の子の物語。
教室での描写はトリィならでは。いじわるや先生の無能さはリアル。
愛されて育っていない少年の心が悲しい。
そして自分と違う子に対する子供の心無い言葉が痛い。
たまらなく不安になるのはわたしはそんな子供のひとりではなかったかという事。
理解が遅く、運動も苦手な子をいじめはしなかったけれど、
友達として存在を心にとめていなかった気がする。
できないのはその子にやる気がないだけだと思ってた。
今なら、がんばってもなかなか勉強が進まない、話したいのに話せない、
遊びたいのに身体が上手く動かせない子がいるのはわかるのに。
身近にディヴィッドみたいな子がいなくても、
この本を読んでそんな子の心の動きを知ってくれる子がふえるといいな。

愛してるってたくさん伝えてるつもりだけど、
ちゃんと伝わってるかな。
愛してる存在が消えてしまうのがやっぱり最悪なことリストの一番。
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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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