放射能事故にまきこまれたある夫婦の物語本


結婚4年目の若い夫婦。
夫はある会社のデザイン部門に勤務していた。
その会社では彼は知らなかったけれど、製品のX線検査が行われていて、
実験室で放射性物質が扱われていた。
そこから放射能漏れの事故があり、
実験室勤務の会社の同僚から、彼も汚染された。

目に見えない放射能。
同じ車に乗ったり、握手したりするだけで次から次へと拡散する。
夫から汚染された妻。ふたりはいろいろな健康被害を発症する。
そして、その最悪のタイミングで待ち望んでいた妊娠が発覚する・・・。


あくまで小説なんだけど、とにかく怖い怖い話。
普通の人には知らないだけで、日常のいろんな所に放射性物質が扱われている。
そして、放射性廃棄物は処理するのにとても費用が掛かることから
違法に扱われている場合が多々ある・・・。
そして、放射能漏れの事故は隠蔽されやすい。


実際に放射能を含んだくず鉄はいろんな物に再生されていたりするらしい。
物を作る会社が経費を削減することで
わたし達はより安価にいろんな物を買えるわけだけど・・・
わぁ~安い!なんて喜んで、とんでもないつけを払わされてたらたまらない。
食べる物でも使う物でも安心をお金で買うってこともあるのかな?
経費削減なら、品質は確保してもっと無駄なものを減らして欲しいよね。


そして、普段は何も知らず無頓着な人々が
一端、事故が公表されるとヒステリックになっていくのも怖い。
本来責められるのは事故を起こした会社なのに
人々は市中に汚染を撒き散らした張本人として、この夫婦にとても辛くあたる。
日常生活が脅かされると、どこかに憎悪の対象を求めようとするみたい。

夫婦は自分たちの身体の健康と将来発症するかもしれない病気への恐怖、
そして生まれてくる赤ちゃんの放射能の影響による不安、
その上、近所の人々の憎悪にも耐えなければならない。
本人たちには、何の落ち度もないのに・・・悲しい


この作品は1960年代に書かれたものを改訂されたもの。
今日、放射性廃棄物の不適切な処分などますます危険が増大していると考え、
キイス氏は再び刊行することにしたらしい。

それにしても、赤ちゃんの件は辛すぎる(T▽T)


わたしのダニエル・キイスの一番好きな作品は、
やっぱり「アルジャーノンに花束を」ね笑顔