本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

雫井脩介

「クロコダイル・ティアーズ」 雫井侑介



この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。

息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての恋人。
被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。
犯人の一言で、残された家族の間に、疑念が広がってしまう。

「息子を殺したのは、あの子よ」
「馬鹿を言うな。俺たちは家族じゃないか」

未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。

家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐で濃密なサスペンスが誕生!


大正時代から続く陶磁器店。その跡取りである息子は妻の元カレに刺され、あっけなく死んでしまう。
大事な息子を事故でもなく事件で亡くしてしまった親は冷静でいられるはずがない。
母親なんてだいたい息子びいき。あんな嫁をもらわなければ死ぬこともなったのにと鬱々としてしまう。
嫁を疑ってしまう要素は多々あり、極めつけは葬儀に涙を流さず噓泣きをしていたこと。。。

この「確かめなければいられない」姑の思考は容易に想像できる。
そしてできるだけフェアであろうとする舅の冷静な対応は反動となり、姑をさらに追い詰めていく・・・

猜疑心に囚われて闇に落ちていく過程が本当に怖い
精神的に不安定になり、健康も損ね、不幸のスパイラル

傾国ならぬ傾家・・・しかも盤石と思われた家さえも崩壊させてしまうのは楚々とした嫁。

姑だって自分の醜い部分や闇を自覚しないで老後を過ごす人生だってあったろうにと思うと本当に気の毒・・・それじゃ小説にならないけど



結末は期待外れなのか、さらなる恐怖なのか・・・



わたしは、すっごく怖かったです

「霧をはらう」 雫井侑介



病院で起きた点滴死傷事件。

入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。

逮捕されたのは、生き残った女児の母親。

人権派の大物弁護士らと共に、若手弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む!


本当にやっていないのだから、まさか有罪判決なんて出ないはず。
まさか司法がそんな誤った判断をするわけがない。。。
でも、冤罪事件は起こってしまう

まったく身に覚えのないことを証明するのがこんなにも難しいことだとは。

なかなか見えてこない事件の真相。
一丸となって戦うべき弁護団の足並みの乱れ・・・
死刑の求刑もありえるのにどこか掴みどころのない被告。

有利な証言をしてくれそうな関係者も気持ちが揺らげば証言も変わってきてしまう。
状況証拠しかないのだから、小さな証言から積み上げていくしかない。

もどかしさとハラハラ感。おもしろい!
法廷劇っていうけど、そこに至る準備は地道でとってもたいへんなのね



最後にもやもやの霧ははれるけど、味方だと思っていた人の裏切りには割り切れないもやっと感が・・・
正義が司法関係者の都合で歪められてしまうなんて

「望み」 雫井脩介



東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登(いしかわかずと)と校正者の妻・貴代美(きよみ)。

二人は、高一の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)と共に、家族四人平和に暮らしていた。

規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、二人は特別な注意を払っていなかった。

そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡すら途絶えてしまった。

心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、二人は胸騒ぎを覚える。

行方不明は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとも……。

息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。揺れ動く父と母の思い――。


特に大きな問題もないと思っていた高校生の息子が帰宅せず、
どうやら事件に関わっているのはまちがいないよう。
事件の被害者にも加害者にもなって欲しくないのは親の願いだが
どちらかの立場にいるのは逃れられない厳しい現実。
事件の概要がわからないまま親の気持ちは激しく揺れる。

これ、とっても残酷よね。。。
たとえ友達の命を奪ってしまった加害者の立場だとしても生きて帰ってきて欲しいと強く願う母。
息子の性格上、加害者になることは考えられないと訴える父。

被害者になって死んでいた方が自分にとって楽だからだろうと 夫を責める妻。
自分の息子がなぜ信じられないのかと もどかしい夫。

真実がまだわからないうちから親族や仕事関係者からも厳しく責められ、
無関係な他人からの中傷、嫌がらせ、マスコミの過度な取材、
そして自分の心さえ何度も疑い不安になる。息子を信じると言いながらただの保身なのかと。

これ、どんな展開になろうとも救われる結末はないよね。。。

この母親の覚悟がすごい。
無事に帰ってきたら一緒に罪をつぐなっていこう。そのためなら今の生活をすべて失ってもかまわない。
娘にも不自由を強いることになるが、仕方ないと割り切る。
乏しい情報しかないままで、ここまで腹をくくれるものか・・・

わたしには 父親の心情の方が理解しやすかった

何かで息子の罪を詫びて自殺するのはだいたい父親だと読んだことがある。
母親は子供を見捨てず共に生きていく道を選ぶのだと。
それはそれで、死より辛い選択な気もするけど。。。

無責任にあれこれ批評することはできても
ごく普通の家庭で常識ある親の元で育った子供だって事件に関わってしまうことがある・・・
忘れちゃいけない悲しい真実

「ビター・ブラッド」 雫井脩介

ベテラン刑事の父親に反発しながらも、同じ道を歩む息子の夏輝。
夏輝がはじめて現場を踏んでから1カ月が経った頃、
捜査一課の係長が何者かに殺害された。
内部犯行説に、曲者揃いの刑事たちは疑心暗鬼に陥るが…本




いまどきは、やらないんだろうけど、
子供の頃に、「どろけい」とか「どろじゅん」っていう遊びがあった。
ま、泥棒と警官役でやる鬼ごっこなんだけどさ 笑顔


追われる者と追う者がはっきりしているゲームはわかりやすい。
それが、警官の側が泥棒と内通してたり、ましてや操作されて踊らされてるんだとしたら・・・


とにかく、最初から誰が裏切り者なのかわからない。
みんな怪しいといえば怪しいし~~
クライマックス、主人公の身近に危険が迫ってからも、
誰なんだ!!!ってはらはらが、
すっごくすっごくおもしろかった(T▽T)

うかつに誰も信じられないなんてーー(T▽T)


それにしても、「いい加減」ってなんて難しいんだろう。
規則どおり、マニュアル通りに行動するほうが何倍も楽なんだと思う。
規則違反やちょっとすすんで悪にかすりながら、
流されず、引き込まれず、まっとうに生きるには
頭がよくないとね。。。


わが身を守るのに精一杯だと、誰かを守ってあげるのなんて無理。
そんなスリリングな日常には縁がないけどさっ。


でも、「僕が守るから」・・・なんてすぐに平気で言える人は、
ホントは何にも考えてない気がするわー落ち込み



本題に戻って・・・

雫井脩介作品は、わたしは2冊目。前に読んだ「犯人に告ぐ」もおもしろかったし、
他の作品も読んでみよっーっと 笑い
沢尻エリカで話題になった「クローズド・ノート」の原作もこの作家さんなのね。知らなかった。
刑事モノ以外の作品も注目ね メモ



「犯人に告ぐ」 雫井脩介

欲しいから盗むのでも、相手が憎いから殺すのでもない。
犯行を注目されることを望む「劇場型犯罪」
これは、それを逆手に取った「劇場型捜査」の顛末。

おもしろいっ!!

徐々に盛り上がってきて最後のの山場なんか、うまいぃぃーー!
でも、これをネタばれするのは影響力ないブログといえどもはばかれるので~
なるべく言わないようにするわ・・・落ち込み

警察ものでは今や避けて通れない、警視庁と県警の諍い。
踊る大捜査線なんてお茶の間ドラマにまで扱われてるのに、
存在し続けるなわばりと手柄争い・・・
そんなの民間人にとっちゃ、どーーちでもいいのに。
犯人さえ捕まればねー
それで、またまたありがちな現場たたき上げ刑事とキャリアの確執。
それも、どっちでもいいんじゃ~
あとは、正義ヅラして結局は視聴率のことしかないマスコミ。

それらみんなを役者として成り立つ「劇場」
主役である犯人がかすむくらいの舞台劇。
誰が味方かもわからない。
そもそも犯人逮捕が一番の目的で、共通の敵は犯罪であるべきなのに。

視聴者、世間、読者として「劇場」ライブに参加していることになる私達。
無責任な個人の発言も「世評」として少なからず流れを作る。
仕掛け人も予想のつかない展開になることも・・・
もはや誰が踊らされているのかも判然としない。
報道に対して裏ばかり勘ぐるのも、どうかと思うけど冷静にありたいよね。

すごくおもしろい作品だけど、
ただひとつキャリア官僚が知性、人間性ともにあまりにもお粗末(゚ε゚)ぷっ
一流大学出身者に偏見あるの?まさかね~(笑)
まぁフィクションですからね^^
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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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