本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

よしもとばなな

「サウスポイント」 よしもとばなな

初恋の少年に送った手紙の一節が、ハワイアンの調べに乗って耳に届いた。

「ひとの人生を縫い上げる」キルト作家となった私は、
その歌い手と「サウスポイント」を訪ねるが…。

生命の輝きに充ちたハワイ島を舞台に描く長篇
本


美しい自然と、個性的な人々。
運命とか、天の啓示のようなエピソードに溢れてるのに
主人公の恋はごくごく普通にまっとうな感じ。
そこがなんとも癒されるというか、幸せな気持ちになる 笑顔


考えてみれば、ハワイの夕陽に導かれるよな偶然の再会でなくとも
たとえば、一生にひとりの人ではなくとも
恋愛してしまうこと事態運命なのかもね。
だって、こんなにたくさん人がいる中で何かで引かれ合うんだもの。


なのに、終わってしまえばすっかり忘れてしまうのはなぜかしら 悲しい


こんな風に初恋の人とずっと心のどこかで繋がってるなんて、やっぱりありえないよなぁ。。。
だけど、恐れながら少しずつお互いの輪郭を確かめて、またしっかりと結ばれていくふたりの再会はリアル。

でも、ムリ。やっぱり初恋の人に再会するなんて怖すぎます 困った



読み終えてみると、なぜだか、一緒に家族を作っていくような関係ばかりが運命の出会いじゃないような気がした。
まだわたしの人生にも運命の出会いがあるのかも ウインク


「王国  その3 ひみつの花園」 よしもとばなな

植物を育てることに天賦の才のある雫石。
植物が欲しているものや気分までも感じることができる。
だから、必要なだけの水や光を与え、元気にしてあげられる。

それと同じように人のエネルギーや心のありようも感じることができる。
けれども、好きすぎると微妙な感情で目が曇ることもあるみたい。
どうせなら曇ったままでいた方が恋愛の時間は続くのに、
少しでも離れた心が見えてしまうから、自分で別れを決めてしまう。
ずるずるしようと、潔くしようと、悲しみは大きくて濃いの(T▽T)


雫石はとても好きなキャラクターだけど、
読んでいて、とても切なくなった。
こんな風に命を育てるのが上手な人に
なんで、わたしはなれないんだろう?悲しい


植物や小動物や赤ちゃん。
気負わずにいくつもの命を上手に育ててしまう人たち。
責任や義務なんかじゃなく、一緒にいることが楽しくて仕方なさそうに見える。
ひとつひとつの手間もすべて愛情なのかな。
生きることは愛することみたいな(゜ーÅ)ホロリ

わたしだって命はとっても好き。
緑やお花のある空間は気持ちいいし、
動物はかわいいし、小さな子はとても愛らしい。
でも、それを育てるとなると、責任のあまりの重さに押しつぶされそうな感じがしちゃうの。


母性本能とは、また違うなぁ。
男の人でも命を育てるのがとても上手な人がいるもの。


命を育むのは、世の中で一番価値のあることだと思う。
育てると気負わないで、命と寄り添うくらいの気持ちならいいのかなぁ?
好きだから一緒にいたい。それだけでいいのかな?


でも、好きで好きで、ずっとずっと一緒にいたいと思っても
いつかは去っていくのが命なんだよね。


日が沈んだり、花が枯れたり、星が瞬いたり。
わたしも自然の一部なのを自覚して、
自然の流れに流されればいいのかなぁ。

「王国  その2」 よしもとばなな

副題は、「痛み、失われたものの影、そして魔法」


その2・・・では、大きな事件は起こらない。
他人から見たら、何も無いと言ってもいいくらい。

でも、主人公の雫石の大切にしていたサボテンが枯れる。
たいせつなものの喪失。
「たいせつなもの」は、ただ物なのではなく、
たくさんの大切な思い出を纏っている。

彼女は自分の一部を失ったように苦しむ。
こんなに敏感にいろんな物事を感じ取っていたら
痛くて仕方ないと思う。
でも、周りの人のいたわりの気持ち・・・やさしさも強く感じることができるから
彼女はまた前に進める。


傷つかないように人の心に鈍感でいられたらいいと思うけど、
それでは、せっかくの素敵な気持ちも見逃してしまうのかも。


繊細で鋭い感性は時として厳しく怖くもあるな~
「その1」で、彼女は、
「片思いの人が出すあのくさい匂いが大嫌いだ」 と、言っていた。
それは鉄の鎖のようなきつい匂いで、相手をがんじがらめにする・・・そうだ。

確かに片思いって自己満足が強くて、
ふつうに心が魅かれ合っている恋人以上に、自分の想いを美化しやすい。
一途で純粋でせつない恋心・・・みたいなのを勝手に作り上げて満足してるのかも。
それにしても、くさいって・・・きびし~(T▽T)

その人のもつ良い性質・・・みたいなのを匂いや色で感じられる雫石だから、
嘘や欺瞞も強く感じ取れるんだね。


気がつかないフリじゃなく、
本気で気がつかない方が、上手く人とつながれるのかな。
そんな脆いネットワークをたくさん広げて、
友達いっぱい!なんて喜べない気もするけど・・・。


好きな人、大切な人のいいところや素敵なところは、
おしみなくいっぱーい感じていたいな笑顔

「王国  その1」 よしもとばなな

副題は 「アンドロメダ・ハイツ」
最近 「その3」が出版された「王国」シリーズ。
続編が作られたり、シリーズ化するものって作品が評価されてるからだと思う。

なんでもないような歌が何章も続いてることもあるけどねー(゜ε゜)ぷっ


よしもとばななの描く目に見えないモノの話はおもしろい。
自然の中に存在する大きな力はわたしも同じように感じるの。
その存在は感じるけど、表現すると違ってしまいそうな事を
温度を変えずに小説にしてしまうばななちゃんは、やっぱり天才なんだろうなー

つきつめていけば、それは神様なんだろうけど
既存の神様とまた別のアプローチで描かれてる。
この上手く言えないけど・・・って感じがぴたっとくるの笑顔


ダン・ブラウンの 「天使と悪魔」で、
ラングドン教授が 「あなたは神を信じるか」と問われるシーンがある。
難しい質問だな・・・だけど、聖書に書いてあることは真実とは思えない・・と、答える。
すると、科学者ビットーリアは、
「神様の話をしてるのよ!文学の話ではないわ!」 と。

このシーンがとっても印象に残ってるの。
そうなのよーーー神様を描いた文学(聖書)や美術(象徴)が自分の気持ちとぴったりとこなくても
それは神を信じてはいないというわけではないのよね。

わたしはいろんな神話や仏像なんかも好きなんだけど、
これが真理と確信もてるものには、まだ出合ってない。
でも、それを信じてる人を否定する気持ちはさらさらない。
そのヘンの幅は寛容に見逃して欲しいのよね。
よくわかりもしないのに信じてるふりするのも本気な人に対して失礼だと思うし。


途中で挫折した、高村薫の 「新リア王」だけど、
修行に修行を重ねても真理が見出せない僧侶の告白が心に残った。

前にぱくちゃんに薦められて読んだ、桐島洋子の 「見えない海に漕ぎ出して-私の「神」探し-」 の中で
同じ頂上を目指していてもその裾野は長く、辿る道は人それぞれ・・・みたいな表現があって
すごく、なるほどなーーって感心したわ。
既に前人が築いた道筋を信じてまっすぐ登っていく僧侶もいれば、
いろんな道を覗きながらゆっくりすすむ選択肢もあると思うの。

たぶん、その頂上にあるのは、真の安らぎなんじゃないかと思う。
それを目指してるのに自分と同じ道を行かない人に怒りや非難を浴びせるのはなんか・・・
近づいてないんじゃないかって気がする。


どうにもならない事なのに、悲しくなったり苦しくなったりしたときに
読むと安らぐ、よしもとばななの本。
自分の心も身体もいとおしく感じるわ^^

「虹」 吉本ばなな

幻冬舎の吉本ばなな旅情?シリーズ本

舞台はタヒチ。とっても静で暖かいラブストーリー。

日本から行くと、ハワイに行くのと時間はあまりかわらない。
時差がないから身体が楽だって友達は言ってた。
元フランス領で、こじんまりしたおしゃれなお店が多くて、
自然がすばらしい・・・・
行ってみたいけど、未だ訪れたことのない国ハイビスカス


主人公は東京のタヒチレストランで働く、接客業を天職とする27歳の女性。
吉本ばななの小説に出てくる仕事を愛する人たちは、本当に魅力的だ。
こまごまとした仕事に関する事柄、職場の空気、プロとして誇り、
いろんな事が好きで好きでたまらないから、
そこにしっかりと自分の居場所を築いている。

仕方ないからしていたり、人からの評価ばかり考えて働いていたのでは、
ぜったい手に入らないもの。
別に自分の仕事について他人に熱く語る必要はない。
人生で大切なものは自分がよくわかっているから。


彼女の職場は「虹」というレストラン。
タヒチに本店があり、心のそこからタヒチを愛しているオーナーが経営している。
名前やスタイルだけではない。
ひとつのものを愛する気持ちがこの店にあふれていて、居心地のいい空間を造っている。


その彼女の人生にも思い戸惑うことがあり、
一度は訪れたいと思っていたタヒチに滞在しながら、自分のすすむべき道をみつけるお話なの。
遠く離れてみると、見えてくるものや、気がつく事がある。
海にもぐったり、山を眺めていて素直になれるのって、なんだかわかる。
そばにいない人への正直な気持ちを確信したりね^^


原マスミのゴーギャンを思い出すイラストも、
タヒチの写真もきれいキラキラ
特に、この夕日はこの目で見たい~~(T▽T)


ただね、プロの作家にこんなこと言うのもなんだけど・・・・
ばななさん、「役不足」って言葉の使い方やっぱりヘンだと思うよぉー
オーナーに人生のパートナーになってくれと言われて、
躊躇する回想シーンで、
「それは無理です、私では役不足です」
って、答えるとこ・・・。
役不足ってーのはさぁ、物足りない役だって意味でしょ?
この場合、大役すぎて務まらないと言いたいんだから、
反対の意味になっちゃうじゃん落ち込み
「力不足です」って言わなきゃだよね?
よくある間違いではあるけどさぁ・・・吉本隆明さんは何も言わないのかなぁー?(笑)


それにしても、愛想がなく言葉を選んでゆっくり話すこの主人公が
わたしは大好き^^


そしてこのレストラン「虹」のタヒチの本店は
フランス語で虹なのか、タヒチ語で虹なのか、
虹迷としては想像して楽しんだ(笑)
その答えは書いてないんだけど、
タヒチから帰るラストシーンで、虹が出て、
空港へと向かう船の中で、誰かがフランス語で 「あ、虹だ!」 って叫ぶの。
その時聞こえたであろう、美しい語感と、タヒチの空にかかる虹の写真が
物語を清清しくしてます笑顔
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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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