本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

角田光代

「銀の夜」 角田光代



イラストレーター井出ちづる。夫は若い女と浮気をしている。嫉妬はまるで感じないがそんな自分に戸惑っている。

早くに結婚して母となった岡野麻友美。自分ができなかったことを幼い娘に託し、人生を生き直そうとする。

帰国子女で独身の草部伊都子。著名翻訳家の母のように非凡に生きたいと必死になるが、何ひとつうまくいかない。

三人は女子高時代に少女バンドを組んでメジャーデビューをした。人生のピークは十代だったと懐かしむ。

三十代となったこれからの人生に、あれ以上興奮することはあるのだろうか…。


おもしろくないことはないんだけど・・・なんかピンとこない感じ?

高校時代、アイドルもどきなバンド活動で世間の注目を一時でも集めた過去は、ちょっと特別な経験かも。
だからと言って、30代では夢中になれることが何も無いなんて・・・

母親の呪縛から逃れようとして、何だか訳ありの恋人の言いなりになってるだけじゃん。とか、
生活に困っていないからって、帰らない夫のいる家で無益に過ごしてないで何かすればいいのに。とか、
「人生のピークが十代」なだけじゃなく思考回路までその頃で止まってるの?としか思えない自己中心の幼稚園ママ。
誰にも共感はできません

このまま終わるわけはないけど、どこに向かっているの?
もどかしくてイラっとするからこそ、何とかそこから一歩踏み出して欲しくて
期待しつつ最後まで読んでしまいました


「坂の途中の家」角田光代




最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない――。

虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていくのだった。

社会を震撼させた乳幼児虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス



裁判員(補充だけど)になると事件の概要だけでなく関係者それぞれの尋問を公判で聴かなければならない。
同じ事件の背景について語っているはずなのにまったく形の違うドラマが何度も展開されていくよう。

主人公は子育てをしている母親だから、誰の証言を聴いてもそのときの被告に自分を重ねてしまう。
その心理描写が息が詰まるほど。。。

これをただの自信のないネガティブで被害者意識の強いだけの女性の物語とは思えない。
そんな時期が自分にもあったと忘れていた黒歴史を突き付けられる感じ

追いつめられるような気持になって、事故であれ故意であれ、わたしの子供の命が奪われなかったことに安堵する。
記録として残っているのは幼くてかわいい写真とやけに明るい育児日記なのに・・・


裁判員の中に、被告がまったく理解できないと厳しい意見ばかり言う年配の女性がでてくる。
まぁ、こういう人もいないとだめなんだろうね。被告人に自分を重ねる人ばかりだったら正しい判断できないくなるだろうし。
でも、こんな人は個人的にはすごく嫌い 
夫の協力なんて無くて当たり前の時代に立派に子供育て上げた人には逆らえない何かがあるけど

とにかく、おもしろい! ・・・とは言い切れない作品。
本なんて読む余裕なんてなかったけど、あの頃に読んでいたら立ち直れないダメージを受けてそう。
けして 「わたしだけじゃないんだ」 なんて主人公に共感して安心することなんてありえない。

なので読む時期を選ぶ作品かも。

「平凡」 角田光代



もし、あの人と結婚していなければ。別れていなければ…。仕事を続けていれば。

どんなふうに暮らしたって、絶対、選ばなかった方のことを想像してしまう

6人の「もし」を描いた傑作小説集


あの時違う選択をしていたら・・・なんて、そんなことはしょっちゅー思います
誰だってそうじゃないの?
切実に後悔するか、なんとなく思ったりするかの違いはあるだろうけど。

そんなよくあるストーリーの平凡な人たちの話かと思えば
何ともエキセントリックな登場人物がいてびっくり(@@)

「もうひとつ」に出てくる不倫カップル。
人前で大声でケンカしたり泣いて騒いだり・・・そして仲直りも派手
こういう行動って素直な感情から出るものかしら??
自分に酔ってんじゃないの?ドラマの主人公になったかのような錯覚しちゃって

「こともなし」の婚約者を取られたからって、相手の女性の職場(デパートの靴売り場)で大暴れした主人公も相当なもんだけど

どちらも相手のことを怒りの感情を抑えきれなくなるぐらい好き・・・って言うより
自分を蔑ろにされたと思って怒ってるのよね?
ドラマのシーンのように自分の物語を脚色して思い出したりするのかしら。恥ずかしい。。。

もちろんドラマにも映画にもなりそうもない人生にだっていろいろあるけどね


ぱっとしない自分と華やかな活動をしている高校時代の友達。
かつては同じ人に恋をして勝ったのは自分の方だった・・・
微妙な友達との距離感がリアルな「平凡」が一番おもしろかったです

「腐るぐらいのど平凡が不幸」ってことは絶対ないよ。
平凡でいられない不幸なんていっぱいあるし。

それでも考えたって仕方ない。自分の人生を生きるしかない。
やり直しなんかできないんだもの。



ほのぼのとしたブラック(?)がいい感じの6編です

「空中庭園」 角田光代

郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」。

でも、本当はみんなが秘密をもっていて…。
ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見た風景を描く連作家族小説
本



小泉今日子主演のDVD を見たので、興味が出て読んでみました。

うん。だいたい映像のイメージ通りな感じ。
きょんきょんの母親を演じる大楠道代の存在感のせいか
映画では母の人生は語られていないのに、暗い影のように際立つ。
母を反面教師として、明るく暖かい理想の家庭を築こうとした娘。


誰だって秘密があって当たり前。
それは、家族だって、友達同士だって、悲しいかな恋人同士だって。。。


でも、秘密の定義ってなんだろう?
できたら、知られたくない事?
ウソをついてでも隠し通したい事?


中学生の長男の言葉。

「ひとりでいれば秘密にならないものが、みんなといるから隠す必要が出てくる」

これは、なるほどと思った。


かくしごとしないなんて家族の決まりを自ら作っておきながら、

「言う必要がないから口にしないことなんてたくさんある」

と、当然のように思っている主人公。
その上、秘密を持ってしまったと告白しようとする夫に対して、

「なんでもかんでも脳味噌つかわずに話して楽になろうとしないでよ!」

と、叫んだりする。


「かくしごとをしない」というルールの前では矛盾だらけ。
でも、これは日常みんなが無意識にバランス取ってることだと思う。
隠しすぎても、さらけ出しすぎても不快な関係になる恐れが 落ち込み

そのバランス感覚が一緒の人とは、心も許せるし、信頼もできる。
なんでもかんでも口に出すのが正直とは思えない。

誰だって、親だって子供だって、そんなの心に抱えてるのに
「何ごともつつみかくさず」な家族であるという演技も要求されてしまうのだから
余計にやっかいなことに。


人前でも自分にも演じているうちに
それは本当の姿と違っているのかどうかもわからなくなってしまいそう。


んーーでもなぁ、人は裸で生きてるわけじゃないし。
化粧して、服を選ぶことで衣装を整え、
インテリアを選ぶことで舞台を整え、
その場に合ったセリフを探しながら、演技し続けているのかもね。


「地上八階の海」 角田光代

目的もなくアジアのどこかを旅するバックパッカーの「真昼の花」と
兄夫婦、母、昔の男。めんどうな人間関係にわずらわされながらも孤独な毎日を送る表題作「地上八階の海」の2編 本


どちらの話もたまらなく荒涼とした景色と閉塞感の物語。
数少ない、ごく普通の明るい登場人物の方が不気味に見えてしまうくらい。


うーーーん、今まで読んだ角田作品の中で一番おもしろくなかった 落ち込み
だいぶ前の作品みたい。
閉塞感と孤独って現代社会に切り離せないものだけど、
救いがないっていうか、どこにも行き着かない結末もなんとも居心地が悪かった。

わたしには合わなかったわん。




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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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