本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

荻原浩

「ワンダーランド急行」 荻原浩



ある朝、通勤と反対方向の電車に、魔が差して乗ってしまった。山の中をさまよい、戻ってくると、誰もマスクをしていない!

今朝の会議はユーツ。こんな生活、いつまで続けるんだ……
ぐだぐだ考えているうちに出てしまった下り電車は「急行」。
次々と通過していく駅を見ながら40歳の野崎修作は「ろくでもない毎日からの脱出」とサボりを決める。スーツで山に登り、「日常」に戻ると……
ん? 何かおかしい、街も家も会社も。

どこかで聞いたような疫病が世界を分断していた。新宗教の持つ票があらゆる選挙を左右するらしい。「正義」に縛られた人たちはネット上で……
ここは私のいるべき場所じゃない。
私の世界へ帰るのだ


日常と非なる世界に迷い込んでしまう、異世界モノなんだけど、
かなり似ているだけに余計怖い。。。
見知っている人物の別の顔を見せられてしまったような。
そして事情は違うけど、なぜこんな世の中になってしまったか容易に想像はできる人間と社会の暗部。
「ろくでもない」と逃げ出した日常に戻りたくてたまらないのに、どうやっても戻れない

いつもの荻原作品らしく、コミカルな明るい語り口で展開していくので楽しく読める。
呆れたり、笑ったりしていられない、一歩間違えばそんな社会になっていたかもしれない分岐点はいろんなところに潜んでいるのかも

「楽園の真下」 荻原浩



日本でいちばん天国に近い島といわれる「志手島」は、本土からは船で19時間、イルカやクジラの泳ぐコーラルブルーの海に囲まれ、亜熱帯の緑深い森に包まれている。

そんな楽園で、ギネス級かもしれない17センチの巨大カマキリが発見された。『びっくりな動物図鑑』を執筆中だったフリーライターの藤間達海は、取材のため現地を訪れるが、 志手島には楽園とは別の姿があった。

2年間で12人が、自殺と思しき水死体で発見されており、ネットでは「自殺の新名所」と話題になって「死出島」と呼ばれていたのだ。

かつて妻を自殺で失った藤間は、なぜ人間は自ら命を絶とうとするのかを考え続けており、志手島にはその取材も兼ねて赴いていた。

やがて島で取材を続ける藤間の身の回りでも不審死が……


人間を襲う巨大カマキリ。そのカマキリの生態を操作していたものは・・・

めちゃめちゃグロくて怖いパニックものです

おもしろいけど、ちょっとホラー要素多すぎ

荒唐無稽に思える展開だけど、生物研究センターの准教授が語る「カマキリを自殺に追い込むハリガネムシのマインドコントロール術」の話は真実だから寄生虫は恐ろしい



「それでも空は青い」 荻原浩



バーテンダーの僕は、骨折で入院した先の看護師の彼女に恋をした。退院後、何度かバーを訪ねてくれたものの、バツイチ7歳年上の彼女との距離はなかなか縮まらない。なぜなら彼女は“牛男”と暮らしているようで……(「僕と彼女と牛男のレシピ」)。

人間関係に正解なんてない――
人づきあいに悩む背中をそっと押してくれる7つの物語


短編ながら読み応えのある作品集。

7編のうち野球がキーワードになっている作品が3編。

同じ野球部からプロになった藤嶋の訃報を聞き、彼との思い出と自分のぱっとしない人生を振り返る主人公・・・「スピードキング」
台湾の旧制中学時代に甲子園に出た祖父に野球を教えられた孫のぼく。キャッチボールしながら何年もかけて祖父が語った人生。「人生はパイナップル」
「僕と彼女と牛男のレシピ」も無口なウシオ君と仲良くなるきっかけは野球。

キャッチボールはボールと一緒に心もやりとりするかのよう。
野球にはあまり興味ないけど、この3編とも心に残りました

他には・・・
近未来的なアンドロイドの謎「あなたによく似た機械」
幽霊と事件もの?「君を守るために、」

異色な作品も楽しめました


それぞれ人生の苦悩があって、切なさも様々。
どんな気分の時だって、それでも空は青いのね

「逢魔が時に会いましょう」荻原浩



大学4年生の高橋真矢は、映画研究会在籍の実力を買われ、アルバイトで民俗学者・布目准教授の助手となった。

布目の現地調査に同行して遠野へ。“座敷わらし”を撮影するため、子どもが8人いる家庭を訪問。

スイカを食べる子どもを数えると、ひとり多い!?

座敷わらし、河童、天狗と日本人の心に棲むあやしいものの正体を求めての珍道中。

笑いと涙のなかに郷愁を誘うもののけ物語。オリジナル文庫


天然っぽい飄々とした民族学者と体力派の女子大生。
微笑ましい力の抜けた、もののけ調査旅行。

わたしは、天狗の正体を探る旅が一番おもしろかったです
捜査するのは、もののけ姫でも物語の舞台になった「たたら場」

たたら製鉄と天狗?

解釈も意外でイマジネーションも広がるし
真矢が遭遇した場面がカラフルで想像してしまったシーンが映像になって忘れられません!

あまり注目も浴びず、お金にならない(と、思われる)民俗学。

「民俗学って、歴史の勝者の自慢話みたいな由緒ある文献とは別のルートで、昔この国で何が行われてきたのかを探る手立てなのかもしれない。」

うーん、なるほどね

「極小農園日記」 荻原浩



小さな庭での野菜づくりに一喜一憂。 創作や旅の名エッセーを収録したファン待望の初エッセイ集。

家族に白い目で見られながらも庭の片隅で細々と続ける長年の趣味、家庭菜園。
小さな戦場で季節ごとの一喜一憂を綴った爆笑奮闘記


今まで荻原作品は何冊も読んでいるので、エッセイもなんだかよく知っている人のお話のように読めました

いい意味でイメージ通り。
ご本人が描いたイラストもほのぼのした味わい。多才な人なのね

野菜作りは本当に楽しいんだろうなぁーという気持ちが伝わってきます
お花は好きでも自分で育てるのが苦手なわたしは、
面倒な細々したした作業に嬉々として取り組む気持ちは・・・ちょっと共感できませんが
手間をかけても思惑通りに育たないのは、何事も同じね

直木賞取ってから作品の発表が少なくなってしまう作家さんもいるなかで
コンスタンスに作品を発表し続ける持久力は
こんなものづくり精神の賜物なのかしら?

荻原先生、またおもしろい作品期待してます!
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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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