本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

湊かなえ

「人間標本」 湊かなえ



人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな

蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。
蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。
あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。

五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。
今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。

――幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。


正直、いくら耽美的であろうとも猟奇殺人は嫌悪感が
もっと内に潜む悪意みたいなイヤミスのが好みなんだけどな。
ハズレだったかな・・・と、思いつつ読み進めるとなんかまだだまだ裏があり。。。

これ以上悪いことはなさそうなのに、真実はもっと残酷

この親子、息子の方がより父親を理解していたということか。

天才的な芸術家は傲慢なのか。でもちょっと傲慢すぎて昔の少女マンガっぽい。

何も救いがないこの感じ。わかってて読んでるんだけどね

「カケラ」 湊かなえ



美容クリニックに勤める医師の久乃は、ある日、故郷の同級生・八重子の娘が亡くなったことを知る。

母の作るドーナツが大好物で、性格の明るい人気者だったという少女に何が起きたのか―。

“美容整形”をテーマに、容姿をめぐる固定観念をあぶりだす心理ミステリ長編


美貌の医師・久乃自身が語るのはプロローグとエピローグのみ。
彼女のクリニックを訪れた同級生から始まり、リレー形式で語り手が代わっていく。
最初のこの脂肪吸引を希望している幼馴染が語る、「昔のわたしは痩せていた」話が・・・くどい
いったい、いつ自殺した少女に結びつくの?もう、痩せられない弁解はいいから!と、思っていると・・・だんだん関係性が見えてくる展開。

見えたと思った断片も語り手が代わるとまた、ぜんぜん違うものに形が変わる。

同じ出来事が人によってまったく異なる思い出になっているのは、湊作品のおもしろさ

当事者だけに聞いたのではわからない事件を取り巻く背景も見えてくる。

太っていたのは確かだけど中学時代は魅力的な女の子だった少女はなぜ自殺したのか?
単純に彼女を傷つけようとした人間は誰もいなかったのに

自分の経験したことだけが確信になっている思い込みの強い高校教師も
本気で彼女を救いたいと思っていたのに。。。

幼いころ容姿を攻撃された語り手たちは大人になっても医師に対して不審を隠さない。
(おそらく)圧倒的な美貌の医師に対する屈折した感情。
そう思うと、最初の「痩せていた自分」が大好きだった語り手のあの執着にも納得できる。

美しくなれば幸福になれるとは限らないけど、
少女が幸福になれなかったのは、あまりにも特殊すぎる事情のせい。

やっぱりきれいな方がいいに決まってる ・・・それが人工的だとしても・・・?

おもしろかった割に最後のメッセージはなんだか陳腐な気がしました

「落日」 湊かなえ



新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。

『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。

笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。

“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語



偶然がやたら多い展開。。。

映画監督が姉と間違えて新人脚本家に依頼してきた題材は、ふたりの同郷で過去に起こった事件。
事件の起きた家族と監督は幼いころ短い間、隣にすんでいたことがあった。

脚本家はさほど記憶に残っていなかった事件を故郷で追っていくうちに、他人事ではなかった真実にたどりつく・・・
これ偶然すぎない?

脚本家と映画監督はそれぞれ大切な人を亡くしている。
二人とも海に沈む夕日が好きだった。

そして、夕日をめぐってまた「偶然」に知ることができた真実が映画監督に希望を与えてくれた。。。

まぁ、辛い子供時代の思い出が救われて、いい結末ではあるんだけど。

偶然でもなければ、15年も前の事件の警察も見逃した真相なんかわからないよね。

でも、都合よすぎる感じは否めません。。。楽しく読めましたが

「ブロードキャスト」 湊かなえ



町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。

その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。

陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。

目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、制作の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。

果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるか―。


「湊かなえが初めて挑む、学園青春小説!」に、ちょっと笑ってしまいました
学校が舞台になっている作品はいくつもあるのにね

指導力のある顧問がいない部活はまとまるのが難しい。
取り組み方にもそれぞれ温度差があり・・・貢献度や能力の差も歴然とあり

頼りない3年生、冷静で厳しい2年生。
新入生の圭祐は思ったことをすぐには口に出さず慎重に考えてしまうタイプ。
正也も人の気持ちを察する洞察力に優れている。

薄い感想をすぐ口に出す3年生があまりに軽率に描かれていて気の毒なほど。
これじゃ先輩の威厳も立場もないのは仕方ない。。。
いたよなぁ、こんな面倒な人。でも、これも部活だよね。

審査員受けを考えすぎると伝えたいことがぶれてしまうから、コンテストは難しいのね。

みんなで作り上げていく充実感と達成感はすばらしい経験


保護者も教師も常識や思いやりがあっていい人ばかり・・・本当に湊作品?(笑)
非常勤とはいえ教師をしていた著者が、いつもとは違う爽やかな学園小説を書いてくれるとなぜか安心感が

文化部の活動もあまり馴染みがなかったので興味深く楽しく読めました。



うーーーん、でもいつもの悪意と闇の作風が懐かしくなってしまう・・・
読者ってわがままね

「未来」 湊かなえ



「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」

ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという……。

『告白』から10年、湊ワーールドの集大成!


なんていうか・・・湊かなえらしさ満載

これでもか、これでもかと、酷い親と不幸の連鎖 。。。

この本の前に読んだ 「そして、バトンは渡された」 と同じ日本の話とは思えないほど両極端。
こちらの毒があまりにもキツすぎて、食傷気味

今が一番辛い時だと思ったところが、これから落ちていく前兆でしかなかったなんて。。。

中学生の女の子にこんな酷い運命
救いなんてないじゃない。もうやめてあげて~

こんな不幸の連続で笑顔の未来なんて信じられる?

この綺麗な装丁がよけいに悲しいです





最新コメント
プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


カテゴリ別アーカイブ
にほんブログ村 小説ブログ 小説読書感想へ
にほんブログ村


にほんブログ村 ハンドメイドブログ 編み物へ
にほんブログ村
QRコード
QRコード