本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

内館牧子

「老害の人」 内館牧子



迷惑なの! と言われても。

昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。
そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。

双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、娘婿に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。

彼の仲間も老害の人ばかり。素人俳句に下手な絵をそえた句集を配る吉田夫妻に、「死にたい死にたい」と言い続ける春子など、老害五重奏(クインテット)は絶好調。

「もうやめてよッ」福太郎の娘・明代はある日、たまりかねて腹の中をぶちまけた。


「終わった人」「すぐ死ぬんだから」に比べると、ドラマチックな出来事は起こらない。
ただ迷惑な老人とその家族の苦労話。。。

ビジネスの場にまで老害がしゃしゃり出て迷惑かけられれば、そりやぁキレるよね

笑えてちょっと切ないけど、これがどう展開するの?状況が変わる余地あり??
コロナ禍のご時世、膠着状態が続いてちょっとダレ気味

孫自慢が原因で長年の友情にヒビが入ることもあるだろうし、
尊敬していた親の老害にうんざりすることだってあるだろう。

でも、そんなあれやこれやがいい感じで大団円。
できすぎだけど、まぁいいのかな



「終わった人」 内館牧子



大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた田代壮介。

仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?

ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す―。

日本中で大反響を巻き起こした大ヒット「定年」小説!


「すぐ死ぬんだから」がおもしろかったので、こちらも読んでみました。

70代のハナに比べると、60代の壮介の物語は切なすぎる。。。

メガバンクで役員になれなかったのは不完全燃焼かもしれないけれど、
多くの同世代より恵まれた家庭環境と経済状態。
年金の額だって老後の不安だって切実な人は大勢いるのに。

それでも、鬱々としてしまうのは「終わって」しまったことを受け入れられないから。
むしろ自己評価が高いだけにプライドが他の年寄と同列になることを許せない。

自分の下にもっと恵まれない人がいて当然。なぜなら自分は努力してきたから・・・という感覚が鼻につくエリート根性なんだけど、
生涯現役への憧れはすごくわかる。
自分が社会と繋がっている、必要とされている感は、趣味だけでは埋められないよね

この奥さんは冷たいようにも見えるけど、仕方ないのかなって気もする。
夫の生き生きとした時間と引き換えの9千万の喪失はあまりにも大きいもの。

それだって、自宅が無くなるわけでも夢だった自分のサロンができなくなったわけでもないのに。
「特別に恵まれていた」老後が、「恵まれた」老後に下がったことに耐えられない。
そういう意味では似た者夫婦。

夫個人の落ち度ではないけど、これから取り返す時間はもうない。
残りの人生を自分らしく生きるプランに変更はきかない。

卒婚はこの二人にはいい選択ではないかしら。
もっと相手が必要な時だけ協力し合える関係の方がいいと思う。
でも、一回故郷に帰ってしまえばもう東京に戻ってくることはないだろうね。
もう一緒に暮らすことはなさそう

おもしろく読めたけど、庶民には「これは自分の物語だ」なんて感想は持てなかったです

「すぐ死ぬんだから」 内館牧子



終活なんて一切しない。それより今を楽しまなきゃ。

78歳の忍ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。

仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲っているが、問題は息子の嫁である。自分に手をかけず、貧乏くさくて人前に出せたものではない。それだけが不満の幸せな老後だ。

ところが夫が倒れたことから、思いがけない裏を知ることになる―。
人生100年時代の新「終活」小説


以前から気になっていた作品。
NHKのドラマも毎週楽しみなので、原作を読んでみました

痛快でおもしろい!

誰でも平等に年を取るのだから、誰にでも共通のテーマ。
裕福なお年寄りなら身ぎれいにできるものだと思っていたけど、
最後はきれいでいたいという気力なのかもね。

もちろん経済力も含めて健康で気持ちの余裕がなければ若さを保つ気持ちも持続しない。
「ナチュラル」という名のほったらかしになってしまいそう。。。

長女の苺の言う「イタい婆さん」は確かに怖いけど・・・
でも、これが着たい!こんなメイクがしたいという気持ちがあるうちはやってみていいと思う。
そんな欲を持ち続けることがすごい

それで元気で楽しくいられるならいいじゃない

将来を見据える切実な言葉もたくさんあり。

「何とでもなる」は若者と老人のものだ。
若者は「切り拓くから何とでもなる」と思い、
老人は「すぐ死ぬんだから、何とでもなる」と思う。

なるほどね
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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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