何者でもなかった。ゆえに自由だった――。
1975年、台北。偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。なぜ? 誰が?
無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。
台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。 第153回直木賞受賞作
おもしろかった!
先に読んだ「僕が殺した人と僕を殺した人」 よりも読みやすい感じ。
台北の街の音や匂いがしてくるような世界は共通している。
暴力的な青春を送りながらも恋には純情な主人公。
80年代、台湾で暮らす彼には日本の文化やアメリカの方が中国本土よりはずっと近い存在だったよう。
その反面、いくら祖父の経験を通した知識と言えども戦争をこんなに身近に捕えているのにも驚き。
彼らにとっては第二次世界大戦というより
抗日戦争に続く、国民党と共産党の戦いの物語。
1984年に初めて中国大陸の祖父の故郷を訪れると、40年以上前の出来事に村全体が激しく恨みを噴出させるシーンにもまた驚愕 (@@)
当時を知らない若者も、話を繰り返し聞かされて我が身の恨みとして捉えている。
これは、戦争中の立場が違った中国人同士の複雑な関係性が生み出したものだけど、
本質は、家族を殺されたという人間のごくシンプルだけど、強い憎しみ。
忘れっぽい日本人には憎しみを持続させるパワーが恐ろしい。。。
近いけど、大きく事情の異なる国。
でも、同じ音楽を聴いて感じる気持ちは同じ。
同時代を生きている物語なんだなと思うと不思議です。