本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

小川糸

「椿ノ恋文」 小川糸



鎌倉と小高い山のふもとで、代書屋を営む鳩子。
家事と育児に奮闘中の鳩子が、いよいよ代書屋を再開します。

可愛かったQ Pちゃんに反抗期が訪れたり、亡き先代の秘めた恋が発覚したり、新しく引っ越してきたお隣さんとの関係に悩まされたり……。

代書屋としても、母親としても、少し成長した鳩子に会いにぜひご来店ください。


静かで丁寧な暮らしを確立していた家庭だって
赤ちゃんの子育てはそんな悠長なこと言ってられない現実があるはず。
年子で同学年の小梅ちゃんと蓮太朗くんが小学校に入学することでやっと一息という感じ。

そして新たな問題はQPちゃんの第二反抗期。
えーあんなにかわいかったQPちゃんにガン無視されるとは・・・
そして、どこか人任せなミツローさんにだって不満はたまる。
キラキラ王国にだってあるよね。むしろ愚痴は抑え目なくらい。ぽっぽちゃんはがんばってると思う。
育児で身動き取れないときに読書が心を自由にしてくれるのには、激しく共感

先代の秘めた恋が繋いだ人との出会いと母娘の大島への旅。
それにしても、先代、レディ・ババと父親の存在がまったく希薄なこの家系。
わかりやすく反抗するのも遺伝?自分の通った道であってもQPちゃんとの関係には悩まされる。
今回それを乗り越えていけたのが大きな収穫

難題の代書も家族の問題が多かった。
でも依頼されてもいないのに子供の名を使った詫び状はどうなんでしょ

ご近所問題って訴える方は常に自分には落ち度はなく、一方的に迷惑かけられてるって思いがち。
絶対分かり合えないと思った相手との解決策を提案したバーバラ夫人は本当にすごい人。

男爵がちょっとパワーダウンした半面、知的ヤクザさんがいい味だしてます

新年の1冊目にふさわしいお話でした



「とわの庭」 小川糸



帰って来ない母を“とわ”は一人で待ち続ける。

何があっても、前を向いて生きる―。

草木や花々、鳥の声。生命の力に支えられ、光に守られて生き抜く“とわ”の物語


はじめは目の見えない少女と母親が寄り添って暮らしていく、
「ミ・ト・ン」のような優しい物語なのかと思った。

ところが、母親が仕事にでかけるからと子供に睡眠薬を服用させるなんて、嫌な予感
いくら「ネムリヒメグスリ」などと言い聞かせようとも。。。
障害のある子供を置いていかなければならない状況だったら、これは楽だけど絶対やってはいけない手段。
案の定、物語のテイストはどんどん変わっていく

なんだろう、再生と許しがテーマなのかもしれないけど、
こんな酷い状況、残酷すぎる
ただの毒親じゃない、同情の余地なしの犯罪者としか思えない。

初恋のリヒトくんとの短い恋愛が別れを迎えても、愛し合った時間は本物だったと思う。
でも、それは対等な大人同士の関係だからよね。

酷い仕打ちをした母親だって、とわを愛して心からかわいいと思った時間があったとは思う。
でも、責任のある親がそんなことでは許されるわけもないのに
愛された思い出がとわを救ってくれるのかもしれないけど、
それで、優しい気持ちになるなんて切なすぎる

憎み続けることの方がパワーを必要とするのだろうけど、
このものわかりの良すぎるおとしどころが、納得できない。
すごい違和感と後味のわりきれなさ。。。

マリさんのお母さんが夜中の公園で目撃した楽しそうに遊んでいた母娘は本当にとわとだったの?
その本当かどうかわからないエピソードが宙に浮いている感じ。

良き友人に恵まれ、盲導犬のジョイとの生活で自立していく過程は救いだけど、
「ライオンのおやつ」のようには感動できなかった。

小川糸作品の中では珍しく好みじゃなくて残念

「ライオンのおやつ」 小川糸



余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピスで過ごすことに決めた。

そこでは毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があった―。

毎日をもっと大切にしたくなる物語


33歳の海野雫は末期がん。辛い抗がん剤の治療もがんばってきたけど、効果は出なかった。

わたしには治療の過程や副作用の苦しみはわかっても、その治療の効果が無かったときの無力感は未だ想像できない。
もう再び元気になって社会復帰する日は来ない。。。

どうやってその日を迎えるか。残された時間の過ごし方として雫が選んだのはレモン島のホスピス。
「暖かい場所で毎日海を見ながら過ごしたい」
今までの生活を清算して、クリスマスの日に船で島にやってきた。

小説だし、きれいごとに過ぎる部分はあると思うけど、
余命を言い渡される病気になる可能性を考えると、こんな場所があるならわたしも入所したい。
最期の痛みや苦しみを緩和しながら、ほどよい距離感の優しいスタッフ。

他の小川作品の主人公同様、雫も係累が少ない。
若くして亡くなるのは気の毒だけど、
心配でたまらない家族を後に残す心配がないのは、ある意味とても恵まれている気もする。

いつもの丁寧な生活感が最期の日々まで続き、温かい気持ちになる
思い出に残るおやつには幸せなエピソードがある

ただ、最後の「スピリチュアル部分」でひとつだけ気になったのは球根のくだり。
これは必要だったのかなぁ・・・
生前会わない選択をした人に気持ちを伝えるにしても、これはちょっと違和感ありました。。。

「針と糸」 小川糸



自分の幸せの先に、誰かの幸せがある。

ふわり木の葉が舞うように、たどり着いたベルリン。

母親との確執を越えて気づいた、「書く」ことの原点。

ひと針ひと針、希望の物語を紡いでいく。

生きることが心から楽しくなるエッセー


小説かと思って手に取ったら、エッセー集でした。
でも、小説の主人公たちと作者がすごく重なります。
「食堂かたつむり」の倫子や「ツバキ文具店」の鳩子の語りを聞いているような感じ。

丁寧な暮らし。優しい気持ち

大事に大事に可愛がられて今に至ったわけではない、
母親との辛い思い出もあって手に入れたおだやかな日々。

苦境から一つ一つ積み重ねるように前に進んでいく物語を紡ぎだす作者らしいエッセー。

せちがらい世の中でも希望を忘れてはいけませんね


「キラキラ共和国」 小川糸



「ツバキ文具店」は、今日も大繁盛です。
バーバラ夫人も、QPちゃんも、守景さんも、みんな元気です。
みなさんのご来店をお待ちいたしております。――店主・鳩子

亡くなった夫からの詫び状、川端康成からの葉書き、
大切な人への最後の手紙……。
伝えたい思い、聞きたかった言葉、
「ツバキ文具店」が承ります


この続編は、ポッポちゃんが守景さんと入籍してQPちゃんが小学校に入学する春から始まります。
前作の雰囲気そのままなんだけど・・・

新しい家族のエピソードがほとんどでちょっと物足りない。。。
この家族こそがキラキラ共和国なんだから仕方ないけど

亡くなった前妻にまったく嫉妬しないのはポッポちゃんらしいのかも。
でも、なんかいい子すぎて、共感できない・・・
澄んだきれいな心がないからかな


そんな中でも感情がぶつかり合うレディ・ババと元ガングロ鳩子の対決はおもしろかった

続編もドラマ化したら、レディ・ババを誰がやるのかなぁ(笑)

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プロフィール

樹里

本が大好き。図書館ヘビーユーザーです。
編み物やビーズで手間のかかるモノを作るのも好き。
ラルクアンシエルらぶ。

好きなテレビ番組は「ブラタモリ」タモリが持ってた江戸の古地図ハンカチが欲しい!

好きなアニメは「東京リベンジャーズ」と「呪術廻戦」関東事変も渋谷事変も終わってしまって寂しい。早く続きが見たい^^


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