木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭、石川啄木ら
若き芸術家たちが謎に挑む
傑作青春ミステリ

明治末期に実在した若き芸術家たちのサロン、
その名も「パンの会」。
隅田川沿いの料理店「第一やまと」に集った
木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭、石川啄木等が推理合戦を繰り広げる。
そこに謎めいた女中・あやのも加わって――。


タイトルから明治時代を舞台に耽美的な事件が起こるのかと思って手に取ったら、
ちょっと違ってました
「パン(牧神)の会」が反自然主義、耽美的傾向の新しい芸術運動の場だったからのサブタイトル。
そこで話題に上がり推理される事件は最初の菊人形事件を除けば人死があるものばかり。
事件か事故か不明なものから猟奇的なものまで、社会的な背景も色濃い。

これはこれで楽しめたけど、
情報の少ない事件を推理するにしても、彼女・あやのに頼りすぎてない?
彼女の語りをみんなで待ちすぎ

彼女の聡明さが際立ってパンの会の面々がただの酔っ払いに見えてきてしまうような・・・

後年、高名な皮膚科医となった木下杢太郎の若き日の医学と芸術に揺れる葛藤は興味深かったけど。

最も幻想的な要素としは、明治の陸軍士官学校で皆が同時に夢見た未来の三島由紀夫の演説シーン。
実際の映像で見ると命懸けだったのに現役自衛官には真剣に聞いてもらえなかった様な彼の演説。
時代を遡って受け入れられなくとも大勢に聞いてもらえたのかな?


最後の最後に明らかになるあやのさんの正体。
最近読んだ「らんたん」に登場する同じ人物とはかなり印象は違うけど、なるほどねと納得