「これは家出ではないので心配しないでね」

14歳と17歳。ニューヨークの郊外に住むいとこ同士の礼那と逸佳は、ある秋の日、二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。

日本の高校を自主退学した逸佳は“ノー(いやだ)”ばかりの人生で、“見る”ことだけが唯一“イエス”だったから。

ボストン、メインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、二人の旅は続いてゆく――。

美しい風景と愛すべき人々、そして「あの日の自分」に出逢える、江國香織二年ぶりの長編小説。


今まで読んだ江國作品中でベストワンかも

いつかちゃん、れーな、と呼び合う二人はとてもいい旅のパートナー。
逸佳の母の言うように友達と長い旅をするとたいてい喧嘩になりそうなものだけど。

人懐っこくて天真爛漫な礼那は、すぐに見知らぬ人に話しかけて面倒事にも首を突っ込む。
人付き合いがあまり得意ではない逸佳は、やれやれ・・・と、思いながらもつき合うことで思いがけない出会いへと繋がっていく。
日本の学校では苦手なことが多かった逸佳が成長していくのも頼もしい。

それでも一人娘の突然の旅立ちをおもしろがれる逸佳の両親は
価値観も人生観も同じ、理想的だけど稀な逞しい夫婦だと思う。

礼那の父のように心配のあまりイライラと妻に当たるような態度は鬱陶しいけれど、まぁ・・・ありがち。4人の親たちの中で一番ものわかりが悪く小者に見えてしまうのが気の毒

この夫婦は娘の行方がわからなくなるようなトラブル(親にとっては)に合わなければ、上手くやっていたかもしれない。
でも、そんな時に垣間見てしまった本質は真実だものね

そんな両親の葛藤も知らず、わくわくする旅を続ける二人。

礼那と同様、わたしも「ホテル・ニューハンプシャー」は大好きだけど、
二人の旅にはアーヴィング的な事件は起こりませんようにと祈りながら読み進めた

キラキラした好奇心に満ちた二人が汚されたり傷つけられたりしないで
旅のエンディングが迎えられますようにと

親だったら心配で反対しちゃうと思うけど、旅する彼女たちが大好きになってしまいました