「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。

ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。

その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。

ある「奇跡」が起こるまでは―。

「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―


初めて読んだ西加奈子作品。

主人公のアイはアメリカ人の父と日本人の母の裕福な夫婦の養子になった。
生まれたシリアの記憶はまったくないが、自分の出自と
「不当な幸福」を手にしているのではないかという思いは常にある。

両親はできすぎなぐらい心が広く常識人で愛情に溢れている。
それでも手放しで甘えられない。常に何か違和感と距離を感じている。

このもどかしさが全編に常にある。それが共感よりちょっとイライラもさせられる

恵まれた環境、信頼できる親友、優秀な頭脳。
それでも世界の不均衡、不幸な出来事に心を痛める・・・だけではなく呪いのように囚われている感じ。

その上、申し分のない恋人に出会い幸せな結婚をするのに
すぐにでも子供が欲しいのにできないことで不幸に苛まれていく。
自分と確かに血の繋がった存在を切望する気持は理解できるけど・・・

自分自身の存在を確信していくラストは感動というよりほっとした。


それにしても・・・・

流産に苦しむ主人公は気の毒だけど、それを望まない妊娠をしてしまった親友に憎悪をぶつけるのはどうも
気持ちはわからなくないけど、好きじゃない。

自分の血が繋がった子供が欲しいとは、養父母には言いにくいことなのかしら?
でも、養母は理由はわからないけれど自分自身の子供は持たずに養子をもらった人。

なぜ素直に悲しさや苦しさを分かち合ってもらわないのか。。。
産む性をもつ女性同士もっと語り合えることはなかったのか。
それが自立した親子関係というものなのか・・・

母と娘の関係は最後までもどかしい感じが残りました