江戸の洒落者たちに人気の袋物屋、神田の三島屋は“お嬢さん"のおちかが一度に一人の語り手を招き入れての変わり百物語も評判だ。

訪れる客は、村でただ一人お化けを見たという百姓の娘に、
夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋、
山陰の小藩の元江戸家老、
心の時を十四歳で止めた老婆。

亡者、憑き神、家の守り神、とあの世やあやかしの者を通して、せつない話、こわい話、悲しい話を語りだす。

「もう、胸を塞ぐものはない」それぞれの客の身の処し方に感じ入る、聞き手のおちかの身にもやがて心ゆれる出来事が……


この世とあの世をつなぐ「迷いの旅籠」 
美しい絵に明りが灯り、行灯のように離れ屋が輝くとき亡者が迷い込んでくる。。。
亡き人に会いたい気持ちが見せる亡者だから怖ろしいことはない。

「食客ひだる神」も商売を盛り立ててくれる憑き神だから、この話も微笑ましい。
江戸の食文化が華やかで美味しそうなものがたくさん 

やはり貧しい山村が舞台の「三鬼」が息が詰まる。
そもそもこの話の語り手、清左衛門が山村に山番士として送られる原因となった事件もすごくおぞましい。
村井家の再興のために雪深い村で職務を全うするが厳しい現実に直面する。。。
この鬼の正体がやっぱり・・・とは思うけどこれ以上悲しい鬼もない

「おくらさま」 仄かな香と美しい娘の取り合わせが何とも妖しい。
娘の命より家の存続の方が大切なのか。
江戸で一番幸せなのは裕福な商人の子だと思ってたけど、
運命に翻弄される姉妹が痛々しい。

この話の最後に親しい人との別れがある。
このシリーズに何度も登場した手習い所の青野利一郎が先生から郷里の藩に戻ることに。
でも、新たに登場した貸本屋の勘一が次回作で大きな役割を担いそう