本棚の宝物

読書感想が中心です。あとは、日々のちょっとしたことと 手作りした作品などなど。

「あとは野となれ大和撫子」 宮内悠介



中央アジアのアラルスタン。ソビエト時代の末期に建てられた沙漠の小国だ。

この国では、初代大統領が側室を囲っていた後宮を将来有望な女性たちの高等教育の場に変え、様々な理由で居場所を無くした少女たちが、政治家や外交官を目指して日夜勉学に励んでいた。

日本人少女ナツキは両親を紛争で失い、ここに身を寄せる者の一人。
後宮の若い衆のリーダーであるアイシャ、姉と慕う面倒見の良いジャミラとともに気楽な日々を送っていたが、現大統領が暗殺され、事態は一変する。

国の危機にもかかわらず中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。

彼女たちはこの国を―自分たちの居場所を守るため、自ら臨時政府を立ち上げ、「国家をやってみる」べく奮闘するが…!?

内紛、外交、宗教対立、テロに陰謀、環境破壊と問題は山積み。

それでも、つらい今日を笑い飛ばして明日へ進み続ける彼女たちが最後に掴み取るものとは―?


いかにもライトノベルという感じのタイトル。
語り口と登場人物のキャラはライトなんだけど、
中央アジアの不安定な情勢はかなりハード

主人公のナツキの父親はODAの技術者としてアラルスタンに赴任していたが、
彼女が5歳の時にウズベキスタンによる空爆で両親を亡くした。
焦土を彷徨っていたとき後宮・ハレムに拾われた。

まさにこんなところに日本人。。。
日本政府は彼女を探してはくれなかったのだろうか

このアラルスタンは架空の国だけど、
旧ソビエトの自然破壊のため塩の砂漠になってしまったアラル海、
少女たちが難民となって後宮に来ることになった事情は現実の問題と重なる。

臨時政府の立ち上げ、隣国との緊張状態、テロリスト集団との交渉、実弾の飛び交う攻防戦。。。
政治手腕の問われる超難問山積み

知的で冷静な判断力。でも少女っぽい自然体で苦境を切り抜けていく。

そんなに都合良くいくか!と、思いつつも爽やかな読後感。

ライトでディープな不思議なお話でした

ワールカップのアジア予選見てるとアジアって広いのがよくわかる。
中央アジアは知らないことがいっぱい。
砂漠での遊牧民の暮らしの様子が興味深かったです






「明日の食卓」 椰月美智子



同じ名前の男の子を育てる3人の母親たち。
愛する我が子に手をあげたのは誰か――。

静岡在住・専業主婦の石橋あすみ36歳、夫・太一は東京に勤務するサラリーマン、息子・優8歳。

神奈川在住・フリーライターの石橋留美子43歳、夫・豊はフリーカメラマン、息子・悠宇8歳。

大阪在住・シングルマザーの石橋加奈30歳、離婚してアルバイトを掛け持ちする毎日、息子・勇8歳。

それぞれが息子のユウを育てながら忙しい日々を送っていた。辛いことも多いけど、幸せな家庭のはずだった。
しかし、些細なことがきっかけで徐々にその生活が崩れていく。無意識に子どもに向いてしまう苛立ちと怒り。果たして3つの石橋家の行き着く果ては……。

どこにでもある家庭の光と闇を描いた、衝撃の物語。


冒頭、ショッキングなシーンから始まる。
この怒りに任せて9歳の「ユウ」に暴力を振るっている母親は誰なのか?

その後3つのそれぞれ幸福な家庭の物語が始まる。
裕福でゆとりある愛情で子育てをしている あすみ。
活発な息子たちに日々消耗しながらもライターの仕事を再開したいと思っている 留美子。
貧しいながらも元気いっぱいに働いて子供との生活を大切にしてる 加奈。

怒りに我を忘れるような母親も家庭も誰にも当てはまらない気がする。
ところが、少しずつ歪んでいく幸福。。。
盤石な幸せなんてありえないのか

3人の誰とも環境が違うけれど、子供や夫へのいら立ち、周囲の視線、違和感のある反応、そして徒労感・・・
身に覚えのある心情が痛い

読んでると、どの家族にも不幸な事件が起こって欲しくなくて読むのがやめられない!
寝る前にちょっとだけ読むつもりが ・・・次の日仕事なのに困った

結末はずるいような気もするけど・・・これしかないような気もして納得してしまいました。


ラスト、未来に向けて新しい一歩を踏み出したようで、まだまだ具体的な不幸な要素も想像できてしまうそれぞれの家庭。
人生なんて本当にわからない・・・


余裕がない時こそ人間性は顕わになってしまうもの
よく結婚して変わったと言うけれど、夫婦二人なら底を見せずともある意味気取っていられると思う。
でも子供を育ててるとそうはいかない。こんな人だったのだと思い知らされる事あり。。。

主張して戦いながら事態を改善しようとする 留美子と、何も言わず飲み込み自分なりの心のやり場をみつける あすみ。
どちらも極端な気がするけど、気持ちはすごくわかります


これはあくまで妻の側からの物語だから、夫の言い分もあるだろうけどね

「ドクター・デスの遺産」 中山七里



安らかな死をもたらす白衣の訪問者は、聖人か、悪魔か。

警視庁vs闇の医師=極限の頭脳戦が幕を開ける。

どんでん返しの帝王が放つ、息もつかせぬ警察医療ミステリ!


初めて読む作家さんの作品。
主人公は俳優養成所出身の刑事・犬養 隼人。このシリーズの4作目だそうです。
初めてでもわかりやすく問題なし

「命の尊厳とは何か。安楽死の是非とは。」このテーマが気になって読んでみました。

治る見込みのない病気の苦しみから解放する・・・
自殺することさえままならない病人に「死ぬ権利」はあるのか。

家族も病人も望んでいる、苦しみもなく安らかに死をもたらす通称「ドクター・デス」

当然連続殺人犯として追う警察。
加害者が被害者に感謝されている状況でも罪は存在するのか?

勿論、法律上はアウト。
でも、簡単にわりきれない事情や倫理観みたいなのがぐるぐる繰り返されて
途中ややくどい印象も

ところが最後にきて急展開!
膠着状態の中盤が一気に解決か?と、思いきや簡単にカタルシスは浄化しない

最後の最後に何だか凝った舞台設定になってきたぞ思ったら、なるほどの結末。
(ちょっとできすぎな気もしますが・・・)

「犯人は捕まえられても罪は捕まえられない」

実際、その立場になったら・・・と思うと考えさせられるテーマでした



ただこの犯人。医療技術や知識はともかく
警察のサイバー捜査の裏をかくようなハッカー並みの技術はどこで身に付けたのかしら?
経歴だけでは見えてこないので気になりました










「ゴースト」 中島京子



温かい気持ちになったあとに、思わず涙があふれてしまう。

――風格のある原宿の洋館はGHQの接収住宅でもあった。そこに小さな女の子はなぜ出没するのか?

戦時中、「踏めよ 殖やせよ」と大活躍し焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンの数奇な運命とは?

少しぼけた仙太郎おじいちゃんが繰り返す、「リョーユー」という言葉の真意は孫娘に届くのか?

おさるのジョージの作者たちは難民キャンプで何をしていたのか?

やわらかいユーモアと時代の底をよみとるセンスで、7つの幽霊を現代に蘇生させる連作集。


最初の「原宿の家」で心をつかまれた。
戦争直後17歳から数年しかいなかった家に執着する強い思い。
彼女にとってその期間は幸せだったのかしら
一人で苦労したであろうその後の人生を思うとなおさら悲しい。

上野の戦争孤児の幽霊・ケンタとネグレクトされている幼い少女・きららの時代を超えた交流 「きららの紙飛行機」
仲間が何人もいた浮浪児と違って現代のきららはもっと孤独。家の中で放置されている状態では福祉の手も及ばない。
幽霊になって姿をあらわしても毎回同じ様に夕方には車に轢かれてしまうケンタ。
空腹が原因で事故にあった当時と今回は状況が違う最期が切ない

難民キャンプに集まる人々の会話とマツモト夫人の回想で構成されている「キャンプ」
どこの戦争の難民なんだろう?と思っていると、いろんな時代の様々な紛争の難民が集まっているらしいことがわかってくる。
主人公が「悪くないキャンプ」と思っている場所とは・・・

過酷な経験をした人がたとえ死後でも穏やかな日々を過ごしている様子は心温まる。

「亡霊たち」のおじいちゃんのように本当に悲惨な体験は戦後何年経っても誰にも話さず、でも忘れることもなく
墓場まで持っていくものなのか。切ない

中島京子の昭和初期の物語はおもしろい。「小さいおうち」も良かったし。
「女中譚」も読んでみようと思ってます

「デンジャラス」 桐野夏生



君臨する男。寵愛される女たち。

文豪が築き上げた理想の“家族帝国”と、そこで繰り広げられる妖しい四角関係―
日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。

人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる


「細雪」の雪子のモデルである潤一郎の妻の妹・重子の語りで綴られていく物語。
昔の関西のお金持ちの娘・・・の典型らしいおっとり、まったりした語り口。
大事件がおこるでもなく、静かに展開していく家族の心理劇。

本当に考えてみれば狭い狭い世界。
文豪の妻と妻の妹、義理の息子の嫁という手近なところで寵愛を競い合いながら静かに暮らしている。
ほの暗い日本家屋の中で障子越しに会話を立ち聞きするような陰な風情。

最初の妻の妹をモデルに「痴人の愛」を書いてるくらいだから、
みんな同じことを何度もする人だとわかっていて翻弄される。

今度の小説に書かれているのは誰のことか・・・・

読んでていらいらするんだけど、やめられない

語り手の重子にはなんの共感も感じないのは
時代背景もあるから仕方ないか

女が仕事を持つのは下品なこと、友達はひとりもいない・・・となれば
家族がすべてになるのは必然よね。

名作のモデルであることに並々ならぬ誇りを持っているのがあきらかなのに
嫁に「お義母は細雪の主人公のモデルということが生き甲斐なんですよね」
と、はっきり言われれば腹を立てる。
ただの見栄を芸術論にすりかえたりして

家族に嫉妬や妬みの澱と一緒に誇りも与える。
芸術家のわがままと身勝手さにはややうんざり。名を遺す大作家とはそんなものなのか。
マゾヒズムも自己愛の現れなのね

このもやもや感がデンジャラス





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